カルテ3ー2

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「香川先生が来てますね」 「そうなの?知らない」 「嘘吐きですね、有馬さん」 知らないわよ。 「嘘も方便ってゆーじゃん」 「有馬さんが貧血で倒れるからですよ」 「貧血、ね」 「ホントの事教えてきましょうか」 陣内もクソ狡い男だった、そう言えば。 真面目腐った顔が見なくても分かる。 「あんたさ、何がしたい訳? こんなおばさんにかかわってないでもっと年相応な事しなさいよ。 だいたいあんた家庭のある身なんでしょ? バッカじゃないの」 「有馬さ」 「精神統一中、暫く話しかけないで」 気持ちの中に、渦巻きが出来てる。 良くない傾向だ。 グルグルの中心にはでっかいモヤモヤがあってそれはもうずっと消える事はなかった。 右隣のソファがまた動いたのが分かった。 陣内が立ち上がったからだ。 今は誰とも話したくない。 こんなに乱れている理由は分かっていた。 これも、ボスの所為だ。 ボスが上手いこと揺さぶりをかけてくるから こんな事になるんだ。 ガヤガヤと周りが煩くなってきた。 また、1日が始まる。 救命には特に、1日の終わりも始まりもそんな区切りはないのに。
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