カルテ3ー2

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夕方、主任が現れた所でやっと選手交代を告げられる。 「な、長かった……」 今日は今までになく一番長かった。 いつもは3日も4日も眠らない事なんてザラ中のザラなのに。 膝が笑う。 オペが続くとほぼ動かずに立ちっぱなし 久しぶりに動いたら 「ひ、膝がぁ!」 「やだー、有馬先生、過労をかんじるわー」 主任の"やっぱ休みはいーわよ"ぐらいの明るさがムカつく。 「主任、ヒゲ」 立ち去る間際に弄ってやる。 べーだ。 「へっ!?うっそ! 出てくる前に剃ってきたしっ! ほら、とぅるんとぅるんじゃんっ!うそつきっ!」 ボスに告げ口した罰だバカ者。 私たち、……私と陣内の"勤務の実績"はこの主任からボスの派遣会社ではなく、直接ボスに報告がいく。 だから私が倒れた事実は、オカマチック主任が3割は歪んだ上乗せをしたんだろう。 「お疲れ様でしたー」 「有馬先生、ゆっくり休んでよ!」 「明日は夜勤からでいいわよー」 「有馬先生気を付けてね!」 有り難い事だ。 こんなに惜しまれて退場できるなんて 陣内のおか……げな訳ねーだろー!! ぶわぁかっものがっ!! そんな陣内は外来に出払っていた。 まぁ、話すこともないし あいつと同じターンで仕事をする事が多いのは 常勤だからだし だから別に、いなくて清々する。 ロッカーで着替えを済ませて、裏口に出る前にフルフルと震えたスマホ。 ラインやらメールやらのアイコンがたくさん記されていた。 届いたばかりのライン表示は陣内で "お疲れ様でした" ひと言だった。 な、な、何故分かるっ!! キョロキョロと辺りを見回したのは言うまでもない。 だって、だってだよ? ナイスタイミング過ぎるだろ! 「こ、こわひよ、陳内……」 引き攣る笑いを堪えてフラフラとする身体を立て直しながら病院を出た。
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