カルテ4ー2

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それから何事もなく過ぎて行く日々にちょっとした違和感を感じてはいたが 業務は非常にやり易く、滞りなく、有り難い限りだ。 「え?今日香川先生お休み?」 「へー、珍しいねぇ」 「開業近いしね、色々あるんじゃない?」 ふーん。 まぁ、開業すんのになんでわざわざ救命にくる必要あるんだ、と思ってたけど。 このままずっと休んじゃえばいいのに。 香川が指導医だったのは、ほんの一瞬の事だった。 前任が都合で旅立ち、その後ガマが決まるまでの あの短い時間だけだったが そりゃ口うるさくて、怒られて なんか分かったような口きかれて。 めちゃめちゃ不愉快…… なのに、"もうお前なんか関係ないよ"と言われてるみたいな放置プレイ。 なに、あのオッサン。 「あー、ダル……」 なんか今月は生理が重い。 たまぁに、あるんだよね。 1日目からドバドバ出血する事。 「有馬先生?」 机に突っ伏した私の肩をトン、と叩いたのは師長。 「はい、外来ですか?」 ステートを掴んで立ち上がる私に笑いながら首を振り、なんだか控え目に耳打ちされた。 「外来受け付けにね、お客さんみえてるわよ」 「は?」 「なんかね、異国の方?なのかな ブレイドさんっておっしゃる、大きな方」 目が点になった。 「ぶ、ブレイドさん??」 な、何故? 何故なの? 仕事でなんてさっぱりパニックを起こした事のない頭が こんな事で揺れ動くなんて。 私は、咄嗟に走り出していた。 だってブレイドさんがくるなんて、普通じゃないんだもん。
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