カルテ4ー2

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忙しいのは全く構わない。 新宿醫院にいた頃はずっと無茶な労働ばっかりだった。 研究室と病棟を往復するのも問題ない。 むしろもっと色々させてほしいぐらいだ。 香川から休みを取るようにメールがきた。 香川の病院の"ドクター親睦会"に出席しろ、との事だった。 いや、顔を合わせていたんだから口頭で伝えればいいのに、これ見よがしにメールって? 「有馬先生、隣いい?」 「お疲れ様です、山河(ヤマカワ)先生」 こーゆーのは苦手。 苦手すぎて、困る。 酒の席は好きではない。 と、いうか、縁がない。 と、いうか 「あれ、有馬先生飲まないの?」 山河は香川の同級で専門は整形外科。 主に、腰椎のスペシャルだ。 「飲んだことないので……」 ウーロン茶をゴクリと喉に入れて 少しの愛想笑いもない顔を山河に向けた。 「えっ!」 驚いた顔が香川とは全く違う。 そりゃ当たり前なんだけど、何故ここで香川と比べるんだ。 ナースたちがあれやこれやと物色をしていた。 ○○先生は上手だ、とか ○△先生はデカそうだ、とか ××先生は手が早い、とか なんでみんな医者がいいんだろうか。 研修中も、大学にいたときも必ず値踏みをする。 私は値踏みの対象にもなった事はない。 誰とも一緒にいなかったからだ。 ひょっとすると影では色々噂されていたかもしれないけど。
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