カルテ4ー2

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いや、でもひっどくズル賢いこのオッサン。 何が言い逃れできないぞ、だ。 そうさせといて、もし。 もし、私が失敗しまくったらどうするつもりだったんだろうか。 「別に……みんなと一緒の事しかしていません」 私は、それしか言えなかった。 だってまさか、無免許で切り貼り引っ張りしてました、なんて…… 口が裂けても言えるわけがないじゃんね。 香川の顔から笑顔の文字が少しずつ消えていく。 "え"が消えて 「もういいって」 "が"が消えて 「早くゲロっちゃえよ、有馬」 "お"も消える 「それともなに?」 スリ替わった面は 「オレに言わせたい?」 もう核心掴んじゃってます系? 揺らぐことのない確証があるのか。 香川の目は一切逸らされる事なく、私の一点を貫く。 パサ、と白い綺麗な封筒から何枚かの紙切れを取り出した香川は机の上にそれを伏せ置くと 「まぁ、見てみろ。 この3ヶ月、お前を追い回した結果だ」 一枚だけをひっくり返した。 追い回した、ってあんたが追い回したんじゃなくて 興信所が追い回したんでしょ。 パトカーとパトカーの間で白衣を着た"私"が先生と一緒にいる写真だった。 すぐに思い当たる風景。 ちょっと前の事だ。 白石は多少お上とも交流があるから こうして呼び出される事も、まま、ある。 それがあんまり表沙汰になって欲しくない件の場合に特に。
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