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「どうしたんですか」
「こっちのセリフだ」
見上げた香川の驚き呆れる顔が面白かった。
「ひとりで反省するのもいい心掛けだな」
いや、ヤる事ばっかり考えてたとか
もう足が痺れてきて立てないとか
そんな感じだけど。
「そんなところ申し訳ないな
キッチンのカウンターに携帯を忘れた。
取ってきてくれないか」
「あ、そうですか」
立ち上がろうとした矢先
足が自分のモノではない生き物になっていて
つま先の感覚が既になくなっていた。
「ぎゃあっ!」
玄関ですっ転んだ私の横を香川の足がスイスイと進むのが見えた。
足の痺れが限界マックスに来ていたようだ。
「あぃ、たたたぃたい」
究極にどうしようもできないその痛痒さに
床を掴みながら苦しんでいるところをまた、香川の足が戻ってきた。
「お前は芸人に転職しろ」
そう言ったと思ったら、私を助けようともせずに
再び出ていってしまう。
鍵が掛かる音がして
またライトが消える。
虚しい!
虚しすぎる!
芸人なんてできるかぁ!
それから直ぐにメールの着信音がした。
私にメールをするのは今のところ香川しかいない。
「くっそぉー」
叫んだと同時に点いたライトがスポットライトのようだ。
全てにおいて煮え切る事のない歯がゆさを乗せて
夜は更けていった。
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