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夜中に目が覚めた。
喉が乾いたのと、アルコールの勢いが無くなったからだ。
デジタルに見覚えがある。
さっきは10時過ぎだったような……
「何時だ……」
細く緑色を刻む数字は明け方までにはまだ時間があった。
それに、ここどこ……。
カーテンがピタリと合わさったそこを開いて
まだまだきらびやかな街並みを見下ろす。
途端に汗が吹き出した感覚。
「わ、たかっ」
高所恐怖症とまではいかないが
高いところはあまり好きではない。
シャッ、とカーテンを閉めて風呂場に移動する間も鼓膜に拍動が響く。
服を脱ぐと煙草の煙を吸ったそれが不快な匂いを醸していた。
「……酒、手強いなぁ」
身体がだるい。
あ、そうだ、喉、カラカラ。
裸で部屋の中をうろつき、ポットを手に取ると
カランカランと音がする。
氷が入っているらしく、注いだそばからコップが結露した。
コップを煽ると、何処を通過しているか分かるくらい冷たすぎる水が身体の真ん中を駆け降りていく。
「うま」
唇の端から零れた雫を舌で掬い舐めて
顔から火が出た。
香川の舌を思い出したからだ。
思わず部屋の中を隅々まで見渡し、誰もいない事に安心する。
心置きなくシャワーにまみれ
こんな夜中にもかかわらずスッカリ爽快気分とフカフカバスローブに身を包んで風呂場を出た私を驚愕させたのは
香川だった。
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