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身体を捩るのは逃げているからだろうか。
それとも全く知らない感覚に震えているのを隠しているからだろうか。
香川は危ない男だ。
罠だとしてもワザワザ入り込んでくる危険人物。
「んっ、ぃ、」
いや、だと低く呟いて香川の唇を避けた。
首筋を下がり谷に下りてきた香川が
胸骨のど真ん中をチクリと吸い上げる。
漏れる息でさえ厭らしく色付き始めた事が不思議でならない。
こんな事は人生で初めての事なのに、どうしてこんな風になるんだろう。
私を触る掌が熱い。
私を舐(ネブ)る舌は毒蜜を塗り込むようで
ビリビリと皮膚の一番上からどんどん下へと染み込んでくる。
子供を取り上げた事もある。
掻爬ならそれこそ数えきれないくらいの経験を積んだ。
おまけに、子供も産んだ。
だけど
身体を誰かに舐められた事なんてない。
こんなに柔らかく激しく触られた事もない。
身体とシーツの擦れる際どい音と
私の吐き出す緩んだ切ない音。
そこにもっとふしだらな音が混ざろうとしている。
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