カルテ5ー2

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もう少しで届きそうなのに…… ピタリと止む運動は明らかに謀られている。 さっきはあんなに奮えあがらせた癖に 今度はピクリとも昇らせないなんて…… なんて なんて ムカつく。 「あー、……イイ顔」 ムカつくくらいの鮮やかな悩殺スマイルで 私を見下ろすのは陣内、ならぬ陳内だ。 「有馬さん、どーしたい? どーしてほしい?言わなきゃわかんねぇよ、オレ」 「ん、んっ」 ほら、あと少し もう少しっ。 上っ側に届けば…… 「……ぁっ」 あくまでもイカせないつもりの陳内。 こいつ、ちっとも短距離選手じゃないじゃん。 「勝手に腰、振らないで?」 ずるずる、と抜け出した陳内の オレはモンスター。 光る半透明の粘液を纏い、まだまだ直立するその姿に悔しさよりも強欲の方が勝った瞬間 「じんない」 脱力した身体に力を渡らせ、なんとか起き上がる。 もう頼まないし。 自分でスルから身体を貸しやがれ。 「乗る」 「上がイイ?」 フルフルと首を振り 陣内の睫毛を掠めて囁く。 「イキたい、陣内」 陣内の匂いがなんとなく落ち着くのが不思議だった。 卑猥な瞳にかかる前髪をガシ、と掻き上げてから 私の肩を掴みソコまで導いて充(ア)てがい 尚も悩殺を色濃く宿しながらコソリと呟く。 「いいよ?好きなだけ」 腰に触れる掌に慄き 引かれる強さに息を詰まらせ 再び引き裂かれるような衝迫に喉を反らせた。 いつ終わるとも知れないレースはまだ始まったばかりだ。
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