カルテ6

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医局に入った時にそこはもぬけの殻状態。 深夜だというのに今日も休ませてはくれないらしい。 流石3次救命。 集中治療が必要な患者がこんなに沢山いるなんて いったいどうなってるんだ。 「あ、有馬先生ぇー」 情けない声を出して医局へ飛び込んできたのは 今本だ。 そういえば、今本は陣内を狙いまくっているんだった。 陣内……ここに若くて(まぁ、バカだけど)可愛らしいのがいるじゃない。 なのに、なんで私かなぁ。 引っ掛かる事がいくつかある。 聞いてもはぐらかされる、か 押し切られる、か これじゃいけない。 「って、先生!聞いてます!?」 キャンキャンと吠える今本 こいつには実家の病院は継げそうもない。 「聞いてるわよ、アンタさほんとに免許取ったわけ?」 「はぁ?取りましたよっ!失礼ですよね!」 フン、と偉そうにふんぞり返るよりまず 基本、さらってこいよ。 「あんた、患者ほっぽり出して来たの?まさか」 「あ、ナースが付いてます」 「バカっ!戻るよ!早く!」 外来担当の今本が心窩部(シンカブ)痛(※みぞおちの辺り)を訴えている患者の心電図を録ったらしいが 今本曰く、何も変化がないのに胸痛持続があるらしい。 「ほんとにちゃんと見た?」 「み、見ましたよ!」 急いで戻ったそこでナースが電話を手にしていた。 手前の患者の心電図にはモニターだけでも分かるくらいSTの上昇。 「心筋梗塞!今本!ニトロスプレー!」 「は、はいっ」 「バイアスピリン2つ用意しといてー」 救命外来内での急変はよくあることだが 医者が目を離すなんてあり得ない。
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