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「有馬さん」
「うっ、わっ!!」
後ろから声をかけられてものっ凄っ、驚いた。
その拍子にスマホを手から滑らせるものの
なんとか地面には落とさずに済む。
反射神経ー、神ー!
「何そんなに慌ててるんですか」
「いや、別にって、そりゃビックリするわバカ者」
「……ふーん」
私に"女子チックな経験"というのが無いからだろうか。
よく考えて、……みなくても
男性経験は二人。
不倫経験はあり。
出産経験もあり。
だけど悩んだり、押したり引いたりという駆け引き的な事をした試しもなければ、したいとも思わない。
私の後ろから、顔の横に顔を寄せて
耳許で囁く陣内。
ここは医局のど真ん中だ。
時間は朝の6時前。
顔が爆発しそうなぐらいに
赤く、赤く、皮膚の色を染めていく。
スィと離れた陣内は、そのままクルリと向きを変え
医局から出て行った。
あぁ、あぁ、もう。
どうしてだ。
これが"パブロフの反射"なんだろうけど。
ギュッ、と縮んだ脚のつけ根とその路の奥。
筋肉が痛いほどよく締まる。
おまけに陣内のセリフを思い出した。
"襞が多い"
だって。
陣内に絡まるそれが人より多いだなんて
なんて欲張りなんだ。
あぁ、と吐き出した溜め息が既に熱かった。
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