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陣内がたまに
怖い、と思うのは気のせいとか
気のせいじゃないとか?
……どっちだ。
「んー」
陣内、あんた、だれ。
キスをすると、お互いの顔の汗がネトリ、と音を立てた。
直後、引き抜かれた芯が吐き出した種は
いつものように私の太腿のすぐ横に放たれる。
そのまま挿入ってくる癖に
ナカでは撒かないんだ。
だからと言って
「有馬さん」
それは避妊ではないんだけど。
「考えといて」
「……なにを」
「一緒に住むの」
「……無理」
陣内の目が瞬間、細められた。
だけどそれは直ぐに元に戻って、何事もなかったように眼鏡をかける。
「陣内」
「なんですか」
「……あんた、何者?」
身支度を整えるのが早い陣内はもう涼しい顔をして
目の前で立っている。
「何者って、なんですか」
私の額やこめかみを大きな掌で拭う陣内は
途端に優しげな顔をする。
「あんたどうして私に付き纏うの」
「好きだからですよ、有馬さん。
こないだ言いましたよね?」
あまりにも優しすぎて
やっぱりそれを怖いと思ってしまうのは
強ち、気のせいではない。
「ほら、早く、パンツ」
丸出しのケツを撫でられて
小さく声を上げる。
「次はちゃんとシてあげますから」
ほら、またパブロフだ。
だけど流されっぱなしではダメなんだ。
「ちゃんとシたいなら
あんたが何者か晒してからにして」
よく言った、よく言ったよ、私!
「開けますよ」
「ええっ!」
ま、ちょいまっ、待って。
陣内はキリリと正した姿勢で私を見下ろし
「パンツ」
慌ててパンツとズボンを上げる私に
クソクソ真面目腐った目を向ける。
じ、じ、陳内めぇ
こいつ、絶対わざとやってるに違いないし!
就業中にイケない事をして
トイレという反響する空間から出る時の背徳感を感じながら、まるでそんな事は少しも気にかけていない陣内の後ろに続いた。
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