カルテ5ー2

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「言いましたよね?」 「じんな、……怖いし、痛いっ」 「有馬さん、食べられたの?食べたの?どっち?」 「た、食べてもないし! たべ、られてもないし!痛い!」 「でも、噛みつかれた訳か これ、摘み食いくらいはされてんじゃないの?」 陣内が笑えない笑いを披露する。 ボスもそうだった。 いったい男たちは何を思ってこんな理不尽な笑いを見せるんだ。 「香川先生に」 「じんな、……お願い、やめ」 「止めませんよ、いい加減に慣れてください」 「なんで、……陣内、なんで」 「なんで?まだ、分からないんですか?」 目から零れそうになっているのは滴でも水滴でもない。 水を主成分とする事は間違いないが、立派な体液だ。 私が、誰とどうなろうが 「あんたには関係ないで」 「関係大有りですよ」 「は?」 「分かりませんか?ほんとに」 「な、何を言ってるの?」 戯れにオバサンの心を、カラダを乱しまくるのはやめてほしいんです、が…… 掴まれた顎から、頬を包む仕種に変わり 押し付けられた唇にとうとう零れた涙。 眉間に少しの皺を寄せたまま、切なげなカオを見せ 「あなたが好きです、有馬さん」 額に額を擦り寄せながら囁いた。 「なにを……ちまよっ」 「初めて会った時から、あなたが好きでした」 は? 初めて? って、まだ日、浅いじゃん、しかも 「陣内、待ってよ、あんた結婚してるんじゃ……」 「してません」 「え?」 だって、落ち着いて 落ち着いてる、落ち着いてるってぇ! 「有馬さんの早とちりです」 「はぁ?」 頭はますますパニック。 パニック脳ミソ。 ちょっと、こういった事に慣れてなくて さっぱりついていかない。 「有馬さん、好きです」 「え?いや、ちょ、」 「ずっと、好きでした」 「ぁっ」 考えられない。 もう、なに、も。
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