カルテ6ー2

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救急隊員と男性が一人ちょうど目の前にいて 私を見た瞬間、隊員はファイルを下ろし、男性がこっちに踏み出した。 「先生!み、美恵は!美恵はっ」 「こちら、ご主人です」 「有馬と言います」 左右の瞳が大きく揺れて、私を探る。 不安げなそこには多くの期待が込められていた。 「お子様の娩出は無事に完了しました。 今は新生児ICUにいます。 奥様は……みえさんは心停止から蘇生を続けましたが 力及ばず……」 静かに頭を下げた。 崩れる男性を隊員がなんとか支えていて そんななかで聞こえてくる呟きは 「どぅして、どうして、助けてくれなかったんですか……!!」 何度も何度も耳した事のあるものだ。 掌をきゅ、と握り締める。 「本当に、ちゃんとやったのか、あんたら!!」 こんな時は、自分の無力さを痛感する。 患者の家族がそう思うのは当たり前の事で 私たちがいったい何をどうして、こうなったのかという事を実際に見ていないんだから仕方がない。 「経緯をご説明します」 近くに記録を持ったナースが出てきて 私と一緒に、患者の家族を別室へ促した。 別に自分の腕を過信している訳でも、慢心をぶっこいている訳でもない。 これは分かってもらうしかないんだ。
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