カルテ6ー2

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明け方にやっと訪れた少しの静寂。 身体がなんとなく疲れていて 知らずのうちに眠ってしまっていた。 医局のソファは枯れ果てたドクターで埋まっていて ……ちょっとした不快感に目を開けると 「げっ」 隣のソファを占領している王のくっさい足がすぐ頭の上に。 「もー、マジでムカつく、王!」 とにかく王は汚い。 王、本体も汚いし 私の部屋より確実に汚い部屋に住んでる事間違いない。 頭の向きを変えると今度は座った誰かにぶち当たる。 ある程度ロングなソファは有り難いが 夜勤8人のドクターのうち4人がこのソファコーナーに集まってるんだから狭い狭い。 「有馬さん、頭乗っけていいですよ?」 「は?」 見上げたそこには陣内。 「膝枕」 「は?」 「ほら、どうぞ」 コイツ、何を考えているんだ。 ほら、どーぞ、とか何サラッと言っちゃってる訳? ば、バカじゃない!? 何故恥ずかしくなる!わたし! 「いらないわよ」 赤くなる顔を隠すようにソファの背凭れ側に顔を向け身体を丸くする。 「照れなくてもいいのに」 微笑が含まれた柔らかな声と共に 大きな掌が頭を撫でる。 は? はぁ?はぁぁ? ちょ、何やってんのよ!タコ! よくよく考えると こんな事をされた経験がなくて なんてーの? 擽った甘…… 私の人生、ひょっとして未知の世界ばっかりなんじゃ…… 陣内は陳内の癖にそんな"擽った甘"を平気で仕掛けてくる。 困る…… 気持ちよくて、困る。 あんなに眠かったのに、バクバクと鳴る心臓の所為で普通に目を瞑るのだってひと苦労だ。 ほら、瞼が無意識に痙攣する。 ひぃぃ、やめて、陣内。
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