カルテ6ー2

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医者の腕は磨けば磨くほど光る場合と どれだけ磨いてもある程度までしか光らない場合がある。 陣内はなんていうのかな…… 感覚が素晴らしい。 これをこうしたらこうできる 普通の医者が確認しながらやることを 頭の中で全部企画して、その頃にはもう 取り掛かってる。 どこでやってきたんだろう。 風呂上がり、散らかった部屋を見てがっかりする。 冷蔵庫にはビールとビールとビールとスパークリングの瓶と…… って、要するに酒しか入ってない。 ああ、魚肉ソーセージ見っけ。 これってピッタリビニールを剥くのがめんどくさいんだよね。 案の定魚肉が割れ割れになる。 「片付けるか」 あんまり、家に帰ってこないのに なんでこんなに散らかるんだろう。 そりゃそうだろ。 脱いだら脱ぎっぱだし それを端に寄せようともせずに 「これじゃいかん」 いかん、ってゆーか 終わってるよね。 なんとか片付ける真似事をした時には テーブルの上に散らばるビールの空き缶。 「あははははは、私、バカだ!」 洗濯機のスイッチを押して 「後は任せた」 と、言い捨てる夜中のおきまりナチュラルハイパーテンション。 天井を見上げると、いつぞやは切れたまんまだったライト。 陣内が買ってきた玉をボスが付け替えるという なんとも訳の分からない不可思議な間接共同作業に吹き出した。 物足りない。 一人が楽だったのに。 最近、やけに侵入してくる陳内のせいで ……独りが物足りない。
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