カルテ6ー2

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陣内の車、これだったっけ? いやいや、ファミリーを乗せて走るエルグラだったじゃん? 「あんた、車変えたの?」 「あー、あれは家にあったのを仕方なく使ってただけです」 「ふぅん」 陣内は、ふ、と微笑むとどうぞ、と言って 背中をトン、と押す。 優しい音なのに 押された背中に違和感を持った。 カクンと脛椎が軽く反るくらい。 何故。 パタン、と扉を閉めて今度は荷物を置く為に後ろの扉を開ける。 陣内の様子は全く変わらなかった。 気のせいか。 何事もなく滑り出す陣内の本当の車……?に乗って 目指したのは 「ねぇ、……陣内」 「どうしたんですか有馬さん」 「陣内、どこ行くの」 「ああ、心配しないでください 行くのは、うち」 「は?」 後ろの荷物がガランと音をたてた。 瓶と缶とが擦れた音。 「うち、って?」 「オレの家」 ちょっと…… ちょっと待ってよ。 「なんで? うちに帰りたいんだけど」 「今日は帰しませんよ?」 「は?」 「帰しません」 言い切った陣内の語尾はビックリするほど強く遮られて これ以上の口答えは無用だと、暗に言われてるみたいだった。
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