カルテ6ー2

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どうしよう。 どうしたら? 「……まさん、着きましたよ」 ……これはヤバイ。 「有馬さん、着きました」 「あ、はい、はいはぃ」 ハッと気付いて、咄嗟に眠かったフリをする。 「有馬さん歩けます?」 「うん」 車を下りてピカピカに磨かれた車体にちょっと納得した。 メタリックに光る紫のボディは意外だったけど、エルグラよりもこっちのが陣内には合っている。 「綺麗な色……」 そこに映ったちょっと歪な自分の姿を見ながら なんとなくショックだったのは その歪んだ姿がホントの自分みたいに思えたからだ。 途中までは良かった。 金に目が眩み、人としての道を少しだけ逸れてたつもりが、元の道には戻れなくなってしまうくらいの逸れようで 罪を償っているつもりでも 実は全然そうじゃないんだ、と思ってしまう。 前途ある若者が言い寄ってくるのを良いことに 彼までも巻き込もうと言うのか。 「有馬さんのが、綺麗ですよ」 後ろに映った大きな陣内。 コンクリート剥き出しの建物の1階に収められた でかいハイブリッド車に押し付けられた。 「ここで、シようか、有馬さん」 「は?」 「イれて、い?」 「何をバカなこ」 「有馬さん」 こんな丸見えなとこ、誰か通ったらアウトじゃない! スリ、スリと擦り付けてくる 陣内の"オレはここでもモンスター"が急速にそのカタチを形成する。 「陣内!すと、ストップ!」 こんなところで勃ち上がるコイツもコイツだけど こんな事されてなーんか股のあたりが異様にキュッキュと締まる私も私だ!
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