カルテ6ー2

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下から続く階段を上がるとそこからが居住スペースだった。 「戸建てに住んでんのね」 陣内の癖に、3階建てとか調子に乗ってるとしか思えない。 しかも、綺麗に片付けられた部屋。 私の部屋とは大違いだ。 「親から譲り受けた唯一の財産です」 「ふぅん」 ってことはさ、ご両親はいないのか。 南に面した広いリビングは窓からの陽射しでとてつもなく明るい。 朝はまだ雲が多かったのに、今日はいい天気になった。 開放的なキッチンは"使用感" が溢れている。 汚ない、とかではなくて きっと 料理が出来るんだ、と思われる。 「ねぇ、陣内」 「何ですか?」 「風呂、入りたいんだけど」 股ぐらが濡れてて気持ちのイイもんじゃない。 「どうぞ」 キッチンの奥へ続くそのスペースは これまた小綺麗に整っていて 「あんた、清掃マニア?」 「普通です」 ポン、と渡されたタオルはフワフワ。 「あ、それから」 タオルの上に乗せられたグレーの何か。 「これ着てください」 「なにこれ」 「オレのTシャツ」 「へ」 陣内を見上げて、甘く微笑んだマスクに 濡れた股ぐらがキュ、と縮んだ。 「ノーパン、ノーブラでお願いします。 あ、いつもノーブラか」 「は?」 いや、アンタ失礼だし! タンクブラだし! ケラケラと笑いながら出て行った陣内。 ね、知ってる? 陣内、私さ。 人ん家に来たの、成人してから初めて。 凄くない? 友だちんとこ、行ったのなんて中学くらいまでじゃない?
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