カルテ6ー2

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「じんな」 「確かめに来ました」 陣内は狡い。 ボスとどっちが狡いか。 狡さの種類は違うけど、陣内のがズルイ。 「有馬さんがちゃんと、ここにいるか」 瞳から放射されるのはきっとパブロフビーム 「有馬さんが一人でいるのか」 こうやって反射の形態が出来上がっていくんだ。 「じんない……」 「確かめに来たんです」 こんなに縋るように言う癖に その口許は自信満々に語る。 「有馬さんがオレに向いてるかどうか」 また、消えた光の中に陣内を追いかけていた。 玄関で伸ばした身体は陣内にかろうじて届いた。 自分からキスをするなんて 考えられなかった。 好きなのかどうかはまだ分からない。 もし、好きになったとしても 私の事実を知られるのは抵抗があるからだ。 だったら 陣内のこの狡さを、利用してやる。 私の事を 好きだ 「好きです」 こう言って、私を抱え込む陣内を。 「有馬さん、……」 柔らかくて甘い 苦しくて辛い そんなキスを繰り返し、私は陣内との別れを惜しんだ。
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