カルテ6ー2

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子宮表面の漿膜にハサミを入れ ある程度それを剥がしてから筋層を切開する。 いつもの事だけど、迷いはない。 「陣内」 「はい」 緊張した空気は必然的に無言を促す。 しかも陣内め、何が「まぁ、なんとか」だよ。 あんた、何者だよ。 今日という今日は、突き止めてやるから。 これまた迷うことのない陣内のフォローを睨みつつ 卵膜が見えて胎児を確認。 「赤ちゃん見えたよー、大丈夫!もうすぐだからねー」 「4分過ぎました!」 「問題ない」 「有馬先生、はや!」 羊水が流れて、子宮の中へ手を入れ 胎児の頭を掴んだ。 「よし、誕生!!」 赤ちゃんを腕に抱えて、待機したドクターとナースたちに後を任せる。 その間にも陣内が後産の処置を 手早く進めていた。 今度は母体の救命措置が続けられる。 そもそもこの帝王切開自体が、母体の血行動態改善のためのものだからだ。 「おかあさん、赤ちゃん産まれたよ!」 「出血どう?」 「もう終わります」 陣内があっという間に子宮を縫合する。 しかも、なに、こいつ。 ……陣内、あんたほんとに何者なの…… 糸を結ぶその手際の良さと速さは 私にも劣らない。 (↑自分が一番速いと言いたい)
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