カルテ6ー3

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「やっときたか、闇医者」 人だかりの真ん中にいる、というか。 お付きとSPに囲まれた白石。 そんな時でも"闇医者"と言うこの代表ザルの私の扱いは変わらない。 「ふーん、随分若作りしたんだな」 「……遅くなりました、代表」 バーカ、バーカ、クソザルバーカ と、口に出して罵ってやりたいのをやたらめったら我慢してしおらしく攻めてみる私に 挑戦的に笑いかけたクソ代表ザル。 くっそぉ、コイツほんとに顔だけはヤバイぐらい整ってやがる、くそぉ。 キュ、と引っ張られた腕 クソ代表ザルの唇が耳朶を擦る。 え? 今、なんて? 冷めた視線が私たちと、周りの温度差をハッキリと線引きしている。 「いいから、言う通りにしろよ? 望絵」 にこやかな笑みの筈なのに 何故こんなに違和感がたくさん付き纏うのか。 "もえ"と呼ばれた事で 皮膚にどっさり凸凹が並ぶ。 白石がかつてそう呼んでいたように このクソ代表ザルまでもがそんな風に私を呼ぶなんて……許せる訳がない。 「呼ばないで」 睨んでも一向に余裕綽々なクソ代表ザル。 こんなガキに呼び捨てにされるなんて しかもこんなガキに命令されるなんて 「バ」 「望絵」 "バかにすんじゃないわよ、すっとこどっこい" と、続くはずだったセリフをちょん切られた。 「ボス……」 目の前に現れたのは いつもいいところで私を制圧するボスだ。 「望絵、こっちにおいで」 スーツを着たボスは見慣れていた。 いつもの風景がそこにあることに落ち着いたからか 私はボスの元へ歩く。 何人かのSPが一緒に着いてくる事にまた嫌な違和感。 「望絵、今日はちゃんと化けたんだな」 「うるさいし」 面と向かってそう言ったボスから目を逸らす。 「なかなかイケる」 「は?」 なんとなく楽しそうに笑ったボスが私を連れてそこを離れた。
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