カルテ6ー3

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クソ代表ザルに"望絵"と呼ばれるのは 全身が許さないと、毛穴がワナワナと立ち上がる。 「望絵」 頭にキタ。 「呼ぶな、って言ったでしょ」 誰に向かってクチ聞いてんだ! とか 殺すぞこらぁ! とか 多分聞こえた気がする。 「虫酸が走るわ、クソザル」 ニヤニヤと笑うばかりのクソ代表ザル。 「おー、こわ。 流石。親父が、前社長が見込んだだけの事アルわ」 「望絵、落ち着け」 隣から低く囁かれた。 おなじ"望絵"でも全く自分への響き方が違う。 私はこれほどまでに白石に関わるモノが嫌いなのかと再確認する。 "相続すると言えば、白石グループを全部壊す事だってできるんだぞ?" クソ代表ザルが私にそう言った。 何を考えているかそれは分からないけど。 なんとなくわかった事がひとつ。 これで私の人生はまた、大きく大きく道を外れて 何処にどう向かうのか分からなくなった、って事だ。 「勿論、受けて立つんだろ?闇医者」 周りからの怒声や中傷が爆発する寸前だった。 闇医者、かよ。 この、すっとこどっこい。 「有り難く、相続します」 部屋の中が煮えくり返るくらいにグツグツと沸き上がった時、クソ代表ザルの高らかな笑いが響いたと同時に、さっき、入ってきたばかりの扉が開いた。 「その必要はありません」 緩やかな音は、馴染みのあるもので。 視界に映り込んだその姿に、脳ミソで"は?"が躍り狂う。 どこをどう見ても、陣内、陣内。 "陣内でございます" 一層ザワツキまくったその部屋は 陣内の登場で水を打ったように鎮まりかえった。
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