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いや、て、ゆーか。
何が、お手数よ
何が、寛げよ
陣内、あんた、私のこと最初(ハナ)から全部知ってたんじゃん。
何が、好きです、だ、バカ者。
立ち上がると、頼りないワンピースがヒラヒラと揺れる。
こんな着たこともないようなモノを着て
はいたことのないようなモノまで履いて
「バッカみたい」
さっき膨らんだモノはどんどん体積を増して
とうとう溢れそうになった時、やっと扉の外に出た。
部屋の外は賑わう音と気さくなピアノで和気藹々としていて、それがとても耳について困る。
「有馬先生、どうなさいますか」
「……お腹すいた」
「左様ですか」
「ひとりにして、ブレイドさん」
ブレイドさんにそう申し出たけど
放っておいてくれるはずはない。
肉だけを食べる事にして、何度もお代わりをする。
皿の上の肉が何重にも滲んだ。
鼻が詰まってきて、味が不鮮明に思えた。
それでも飲み込んで、また口に入れて
だけどちっとも美味しくない。
「不味い」
ここに居る事さえ滑稽だ。
なに、私、なにやってんの。
誰の為に来たの。
違う
誰の為のつもりだったんだ……
「私の人生なんてこんなもん、か」
バカみたい。
ってゆーかバカだわ。
後ろからついてくるのはブレイドさんだ。
ブレイドさんも全部知ってた一味じゃん。
ボスだって、そうだ。
「くっそ、マジでウケる」
ね、これ村八分じゃね?
知ってる?村八分。
まぁ、要は仲間外れのことだけどさ。
「有馬先生、お送りします」
「いえ、けっこう」
「それは出来かねます!」
「ほんとに、お構い無く
もう、ほんとに、何もかもお構い無く」
サンダルがペルシャ絨毯の毛足に少しだけ埋まるそこを速足で抜ける。
「ほっといてくれ、って言ってんの」
急に立ち止まったからか
ブレイドさんがその勢いを止められず私を追い抜かした。
おい!
うぇい!
「あ、失礼しました」
そのまま、後ろ向きに下がってくるあたり
どうしてもシリアスになりきれないこの物語の性(サガ)。
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