973人が本棚に入れています
本棚に追加
凄い匂い。
血の匂いは、時間が経てば経つほど悪臭以外のなにものでもなくなる。
助手席の扉を開けて
運転席の扉も開けて
噎せ返って嘔吐きそうな空気を追い出す。
「この車はもう廃車かな」
荷物を取り出してその中からスマホを探った。
たくさんの色が色々を伝える。
メールも着信もラインも普通では考えられないくらいの数が画面に数字を連ねていた。
とにかくこの車を白石の誰かに引き取ってもらわないと。
一度、大きく息を吸い込んで空を仰ぐ。
さっき見た月の姿はもうそこにはなかった。
替わりに
間もなく夜明けが来る事を知らせる光が空の大部分を占領している。
どうやら今日も雨は降りそうもない。
願いが届いたのかどうかは分からないけど
ただ、感謝した。
これも、謙虚といえば謙虚なのかな。
スマホをタッチして迷わずに選んだのは
白石の息子だという男の番号だ。
夥しいほどの連絡は
コイツと
全てを知っていた策士からのモノだった。
でもどれも中身を確認なんてする気はない。
ただ、車を引き取ってもらって
ブレイドさんの世話を妬く人を寄越してもらうだけ。
ただそれだけの事務的な処理をするだけだ。
ワンコールしないうちに通話は繋がった。
はや。心の中で突っ込み
鼻で笑った。
最初のコメントを投稿しよう!