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脳ミソの片隅で響く痛みはいっこうに良くならない。
ブレイドさんのカルテに引き継ぎや細かな情報を垂れ込み、伸びを一つした。
「有馬さん!」
こんなに切羽詰まった音を出す陣内は知らなかった。
「陣内」
「あり」
「ストップ」
いつもの陣内ではない陣内が私の制止を聞く様子もなく椅子の真横に立つ。
さっき、いや、夕べ見たまんまの陣内。
「近寄るな、って言ったんだけど」
「……有馬さん」
「ブレイドさん、私を庇ってこうなったの。
あんたらが、遺産がどーの、こーのって言ってる間よ。
保険証持ってきた?
ちゃんと入院の手続きしてきてよ?
それから」
見上げた陣内は、今までになく険しい顔をしているように見える。
バカクソミソ真面目腐ったそれとは違う。
白石の人間だって分かってしまうと私の脳ミソが遮断する。
掌が近付いて来る事に、今までにない感情が湧いてきた。
「触るな」
ほら、おんなじだ。
私に届くほぼ寸前でそれはピタリと動かなくなって、スルリと下げられた。
「もう、あんたたちさ、今後私にはかかわらないでよ……
必要な会話以外はしないし
あんたに触れる事もその反対もない」
視線を画面に戻して、カルテの続きを処理する。
「有馬さん、無事で、良かった」
陣内が呟いた。
なんて言った?
「は?何が?何が良かった?」
何処かがプッツン、って切れるのが
ありありとわかった。
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