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ネクタイのない襟首を掴んでいた。
「何が良かったのよ。
何も良くない!人がひとり、撃たれたんだよ」
今、つい今し方"触れない"宣言をしたばかりじゃない。
なのにもう破ってんじゃん。
医局の中での殺伐とした雰囲気は勿論外にも届いている。
"陣内先生の首をぎゅうぎゅう締める有馬先生③"
って、タイトルが付きそうだった今までとはワケが違う。
「あんたらの所為よ!
訳のわかんない茶番は自分たちだけにしなさいよ!
こうなるって分かってたんだろうが!
ちょっと考えたら分かるわ!!
ブレイドさんは死にかけたんだ、お前の所為で!」
長すぎる睫毛がほんとに邪魔。
もっと、もっと睨み付けてやりたい。
それこそ、穴が開くくらいに
反対側まで見通せるようなデッカイ穴。
「昔っからそうでしょ。
あんたの親父もおんなじことやってきたでしょ?
あんたもあのクソザルもおんなじよ」
「有馬先生、なにやってるの!!!」
師長が主任を従えて入ってきた。
「有馬先生!!
ほら、陣内先生死んじゃうから!」
主任が私の腕を掴んだ。
だけどさらにそこに力を籠める。
「有馬先生!!離してっ!!」
「お前の所為だ、陣内」
陣内は抵抗も何もしなかった。
ただ私を真っ直ぐに見てその眉を寄せ
小綺麗な顔を不規則に歪ませた。
「有馬!!!」
医局の入り口から聞こえた私を呼ぶ声に
ハッとして、やっとその手を離す。
主任が私と陣内の間にその身体を滑らせて
ぎゅ、と私の手を握った。
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