カルテ6ー3

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ネクタイのない襟首を掴んでいた。 「何が良かったのよ。 何も良くない!人がひとり、撃たれたんだよ」 今、つい今し方"触れない"宣言をしたばかりじゃない。 なのにもう破ってんじゃん。 医局の中での殺伐とした雰囲気は勿論外にも届いている。 "陣内先生の首をぎゅうぎゅう締める有馬先生③" って、タイトルが付きそうだった今までとはワケが違う。 「あんたらの所為よ! 訳のわかんない茶番は自分たちだけにしなさいよ! こうなるって分かってたんだろうが! ちょっと考えたら分かるわ!! ブレイドさんは死にかけたんだ、お前の所為で!」 長すぎる睫毛がほんとに邪魔。 もっと、もっと睨み付けてやりたい。 それこそ、穴が開くくらいに 反対側まで見通せるようなデッカイ穴。 「昔っからそうでしょ。 あんたの親父もおんなじことやってきたでしょ? あんたもあのクソザルもおんなじよ」 「有馬先生、なにやってるの!!!」 師長が主任を従えて入ってきた。 「有馬先生!! ほら、陣内先生死んじゃうから!」 主任が私の腕を掴んだ。 だけどさらにそこに力を籠める。 「有馬先生!!離してっ!!」 「お前の所為だ、陣内」 陣内は抵抗も何もしなかった。 ただ私を真っ直ぐに見てその眉を寄せ 小綺麗な顔を不規則に歪ませた。 「有馬!!!」 医局の入り口から聞こえた私を呼ぶ声に ハッとして、やっとその手を離す。 主任が私と陣内の間にその身体を滑らせて ぎゅ、と私の手を握った。
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