カルテ6ー3

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マンションの前でもおんなじだった。 部屋までちゃんと私を送り届けるボスは 鍵も出させてくれない。 エントランスも、部屋のドアも普段は絶対に使わないボスの持ち鍵で開ける。 それに。 「なんだこの部屋は」 「……いつも通りですけど」 はぁ、と大きくため息をついたボスが 「望絵、風呂」 「は?」 「お前は風呂だ」 「ああ、風呂掃除ですか」 はいはい、とボスの脇を通り抜けようとした。 「39度の湯で、あがってイイと言うまで溺れてこい」 「は?」 「お前に掃除は無理だ」 ほら、やっぱり悪口はバンバン出てくんじゃん。 「ボス、病院、行かなくていいんですか」 「そんな事は気にしなくていいからいけ」 慣れない化粧を使った事のないクレンジングで落とし、言われた通りに39度の湯に浸かる。 従順じゃん、私。 そして、次に気付いた時にはベッドの上だった。 窓の外は既に朱色の光景に変わっていて、ああ、寝たんだ、とボンヤリ思った。 身体を起こすとなんとなく重い。 それに、チュニックを着ているものの、股間がスースーすることに激しく違和感。 「あれ」 パラリと捲ってみて、そりゃ、驚愕。 「ぱ、パンツ、履いてねー……」 途端に思い出したのは陣内の家に忘れてきたパンツ。 「あ、違う……」 寝起きでちょっと狂った回路は さっきの事を少しだけ置き去りにしていたらしい。 「そうか、風呂で寝ちゃったんだ」 ボスが、運んだんだよね? たぶん。 いや、絶対にそうだ。 恥ずかしー。 なんとなく照れながらリビングに出てさらに驚愕した。 「ぼ、ぼす!?」 こんな時間になんでボスが。 「起きたか」 スッカリ片付いた部屋のソファで新聞を読んでいたボスとバッチリ目が合ってしまった。
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