カルテ7ー2

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「うまいこと肋骨避けて刺してやがる」 「え?」 「さっきの患者もそうだけどな、確実に動脈切って あれ、後腹膜までいってるな」 先輩が血にまみれたディスポを交換しながら呟いた。 「こっちのは肝臓、使いもんになるか分かんねぇぞ ……有馬」 ガサガサと術着を被ると 「ま、やるだけやってみようじゃない」 そんな風にニヤリと笑う。 なに? 先輩。 先輩は私が大学院にいた時にお世話になった4つ上の頼れる外科医。 当時は若い世代で群を抜いて凄腕で 多くを語らない癖にキメるところはキメる 唯一、尊敬できた人だ。 「こちら、佐藤 心宙(サトウミヒロ)先生です」 「佐藤です、今はB病院の救命にいます。 飛び入りですが、仕切らせてください、宜しくお願いします」 そう言いながら手を出したそこに、メスが置かれる。 佐藤先輩は、迷わず身体にそれを這わせた。 血の海、とは正にこのことで 出血量からいえば、こないだのブレイドさんよりも多い。 輸血は全開に落とされている。 これは、コントロールしながら早目に片付けないとだめだ。 人を刺す、というのはなかなか力がいる。 さっき、先輩が言った“肋骨を避けて”と言うのがほんとに引っ掛かった。
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