カルテ7ー2

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「普通だったら即死するような症例だぞ」 「ラッキーでしたね」 「……いやいや、有馬くん、キミね、」 ピンと伸ばした糸をカットするように促した先輩。 「ラッキーが何重にも重なったらこれはもう仕組まれた奇跡だろ」 「は?」 マスクの下の表情は分からないけど 目がにこやかに睨んでくる。 「奇跡は自分で起こせるとこまで来たのか……」 「先輩大袈裟ですよ」 奇跡だろうが何だろうが 目の前にいる患者が、生きようとする力と 何としても助けたいと思うこっちの想いが通じ合ったんだ。 ラッキーだったとしか、言いようがない。 「良かったじゃないですか。 先輩がその場にいた事もある意味奇跡」 そう言って笑った私の顔をジッと見た先輩は 「お前、なんか普通っぽくなったな」 「は?」 「昔はなんて言うの?もっと、こーhot and cool的な? いやcoolが大部分だったんだけどさ」 「はぁ?」 「それ、ツンデレの事ですか?」 「それ!」 隣にいたナースに大きく相槌を打った先輩。 「なにそれ、ツンデレって」 「望絵先生、ツンデレ知らないの?!」 「知ってるわよ! ツンとデレが混在してるヤツでしょ?」 「それな!」 それくらい知ってるっつの。 しかも私のどこがツンデレだ! ムッ、として見上げた先輩の目は 今度はちゃんとにこやかに笑っていた。
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