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ズカズカとテーブルまで歩いて、そのカップをなぎ倒す。
「がっシャン」
耳に痛い音と共に破片がそこらじゅうに散らばった。
…………なんて、そんな事が手っ取り早く出来れば
イライラすることもないんだろうか。
チョン、と鎮座するカップ&ソーサーを見て
出来もしないようなことを頭の中でやってみた。
陣内、彼女はだぁれ?
素直に聞きなさい、と言うかもしれないけど
そんな事が出来るなら、有馬望絵の人生はもっと別の方向へ転がっていたかもしれない。
「座ってて、有馬さん」
トン、と押されたのはソファの方だった。
陣内は別に何を隠すふうでもなく、そのカップをさげ、布巾でテーブルを拭く。
カチャカチャと洗い物の音がする。
「陣内、ビール」
「ああ、冷蔵庫にありますよ」
「自分で取る」
ワザワザ陣内の側へ行くためにビールを飲む私って
なんて健気なんだろうか。
ブレイドさんがそう言ってたのを思い出してムカついた。
相変わらずシンクも、そのカウンターも
冷蔵庫の中も綺麗だった。
「有馬さん、なんか食べます?」
「え?」
「だって、こんな時間にアルコールだけなんて
もう気を付けないとよんじ」
「38、まだ、38よ」
バタンと乱暴に閉めた冷蔵庫が、バルン、と揺れた。
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