カルテ7ー2

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「もう38ですよ」 陣内がビールを飲みながらだらしなく寛(クツロ)ぐ私の目の前に二つの皿を差し出す。 オレンジとイエロー。 オレンジは人参と玉ねぎ?のサラダ。 イエローは……見て唾液腺がキュ、と締まって ちょっと痛くなった。 さらに、これはパブロフだ。 グレープフルーツ。 陣内が好んで食べるフルーツ。 「健康的なつまみだわね」 「当たり前、有馬さんにはこれから大仕事が待ってますからね?」 キリリとするくらい真面目顔を見せた陣内が その唇を少しだけ薄く引く。 「大仕事?」 「そう」 「……なによ、それ」 「妊娠と出産」 時間が止まった。 陣内の強烈な裸眼ビームが確実に私を突き刺している。 いやいや、違うだろ、陣内よ。 「……帰る」 「ダメ、帰しません」 立ち上がってはみたものの……このまま突っ切っても陣内に行く手を阻まれて、陳内に手篭められるに決まってる。 私だっていい加減に学習する人間なんだ。 いつまでも仕事ばっかりだなんて言わせないぞぅ! 「あんたさ、人の話、聞いてた?」 「どんな話ですか?」 「私、子供はいらない」 「オレは欲しい。 有馬さんと、オレの子供」 コイツ。 私の昔の事を知ってる筈なのに、よく言うよ。 「もう、二度と産みたくない」 グビグビと缶を煽って喉を鳴らした。 これで、どうだ!と、言わんばかりに。
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