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「有馬さん」
「なによ、バカ陣内」
「聞かないんですか」
「は?」
陣内が目の前で相変わらず辛辣なビームを何本も何本も私に突き刺す。
死ぬわ。マジで。
「気にならないんですか、有馬さん」
「何を言わせたいのよ、クソ陣内」
空気だけが動いている少しだけの無動の中
「今、オレがやってるのは白石の入れ替えなんです」
陣内がホロ、と話し出した。
「オレにはそれをやらなきゃならない義務がある」
「……白石の事は私には関係ない」
「ああ、そうでしたね
関係あるのは、彼女のことだけ?」
彼女、と言われて無性に腹が立った。
満たんになった胸の奥、喉の下の方からブワリと込み上げてきたのは、紛れもない嫉妬と怒り。
「あの朝も……そして今日も、隠れなきゃならないぐらい、ショックだった?」
コイツ。
それも知ってやがったか。
「ショック?
ショックなんかじゃないわ」
ビームに対抗するには
ビームだろうが。
陣内の光線に負けないようなものを出せるかは分からない。
だけど、ここで引き下がる理由にはいかないし。
頑張れ、望絵ちゃん!
「怒りよ怒り。分かる?
激怒」
陣内の黒い瞳の中が膨らみ、また瞬時に元に戻った。
「隠れたのは怒りを爆発させないためよ
自分のため。アンタのためじゃない。」
陣内が何も言わないまま、瞬きだけを繰り返す。
そして、睨み合いの後
「有馬さん、そっち行ってい?」
「は?」
「もう、ヤバイわ、あれこれヤバイ」
ガサ、と立ち上がった陣内の驚くほどの速い移動と
「それさ、めちゃめちゃ凄まじい告白なんだけど」
「へ?」
「ごめん、有馬さん」
「はい?」
私を覆った一瞬の出来事。
それはそれは凄まじいパワーだ。
“勃ち過ぎて、痛ぇ”
耳朶を食むように、囁かれたその音が熱くて
満たんになったところが、ギュウギュウと痛かった。
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