カルテ7ー2

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何故私が気を遣ってこっちから帰らなきゃならないんだ。 まだ正面の自動ドアは機能してはいなくて 横っちょのドアからこっそり抜け出す。 いや、だから、こっそりとか言うから 逃げてるみたいな感じになるんじゃないの。 もっと違う表現にして欲しいんだけど。 マジで。 同じ朝陽の筈なのに、なんとなくさっきよりも眩しくない。 いやいや、これからますます絶好調になってくるんだから もっと眩しい筈なのに 「なんだょ、だからめんどくさいっつの」 誰かが好きとか、気になるとか その対象に自分らしさを奪われてしまうような気がする。 今の私がいい例だ。 日常生活に支障出るじゃんね。 よく考えたら陣内なんて私より6つも若い小僧じゃん。 それなのにイカソーメン飛ばしといて、あっさりトンズラしやがって。 なーにが、「有馬さん、パンツあげて」だ。 テメェがあげろっての。 そりゃ男子はさ、ソーメン流しちゃえばおわりかもしんないけど 女子は掴み損ねたソーメン処理しなきゃなんないんだよ。 つい今さっき見た、陣内と黒塗りの車から一緒に下りてきた絵に描いたようなプリチーなガールを思い出し、けっ、と口を歪ませる。 「あんたなんか、キライよ」 コンクリートに向かって吐いたセリフは そっくりそのまま自分に跳ね返ってきた。
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