カルテ7ー2

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初夏の昼下がり。 ムードもへったくれもない外科病棟の談話広場。 目の前には、にこやかな笑顔と物腰柔らかなその態度が見た目とのギャップ萌えだとかなんとかで 一般外科病棟でスッカリ人気者になった男。 「なんでそんなにニコヤカに笑ってんのよ」 ここ最近で 私の中のヤツの株が大暴落をした結果 すっかりタメ口に成り下がってしまった。 「いえ、ただ嬉しいだけです。 有馬先生」 カップリングテーブルで向かい合わせに座る図柄は また多大な勘違いを生むんじゃないだろうか。 「何が」 「いえ、岳杜さんと仲直りしていただけた事が 何より嬉しくて、うれ」 「勘解由小路さん」 「はい」 「うるさいし」 「はい」 ニコニコとしやがってぇっ! 白石関係の男たちにはなんだかイライラさせられる。 「で、勘解由小路さん、なに」 「フリガナは付けなくても?」 「は?」 「勘解由小路にフリガナは」 「ああ、かでのこうじサン」 「はい」 「で、何用よ!勘解由小路!」 私だけが熱くなっているこの現場は 端から見たらいったいどんな理由付けをされるんだろうか。 「気になさってるんじゃないかと思いまして」 「は?」 気になってる事はひとつしかない。 けど。
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