カルテ7ー2

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無差別、というものほど腹立たしい事はない。 犯人とみられる男は8人に危害を加えて 現行犯逮捕されたと伝えられる。 8人のうち4人は重症、この救急センターと 近くの大学病院へ分かれて搬送されるとのこと。 そして、残る4人も次いでうちへと運ばれる事になった。 重い症状の2人に付き添ったのが、たまたまその場に居合わせた医者。 2台の救急車が到着してそのうち一方の中から怒声が響く。 そして軽々飛び降りたその主は先に到着した方へ駆け寄った。 「初期輸液で反応なし、血圧は上50、ショック状態です! 赤血球の用意は出来てますか??」 「はい、直ぐにオペ室へ!」 「はい!」 主任と引き継ぎの医師はなにやら勇ましい声音だ。 「傷口2箇所から腸管脱出認めます、結構深い」 「分かりました!!」 「こっちは直ぐに開いて止血しないと!」 「え??」 私の目の前に停まった救急車から出てきたストレッチャー。 振り向いてこっちに駆け寄る男の顔を見て、それはそれは驚いた。 「せ、先輩??」 日に焼けた顔。 「おー、有馬!有馬か!!」 目が点、になるくらい久しぶりに会った先輩は あ、と気付いた途端にニヤリと笑った。 「俺も手伝うから、さっさとやっちまおう お前ならイケル気がするわ」 「は?」 「とにかく、速く運んで!!」 黒いTシャツにハーフパンツ、しかも、足元はビーサン。 なんて軽々しい出で立ち。 この人が“私は医者です “ と言って最初は何人が信じただろうか。 ま、腕はスペシャルには違いない。 この人は私が先生の次に凄いと思った人だからだ。
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