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助かった、と思ったのは
ジーパンのケツポケットのスマホが音を立てたから。
「ちょ、陣内!電話、電話取らせて!」
「……誰、こんなタイミングで邪魔してくるの……」
心底悔しそうに呟いた陣内がその歩みを緩めた。
ちょっとだけ可笑しくなって
クスリ、と出た笑い。
スマホを見つめて、その笑いがハテナに変わる。
知らない番号だ。
いや、元々、私のこの使えないスマホには決まった人からしか連絡が無い。
前は不動のチャンピオン、ボス。
だったのが今は陣内にすり替わっていた。
「だれ、これ」
首を傾げた私をじぃ、と見つめる陣内は
人差し指を目の前に掲げてクルクルと回した。
は?
まけ?
マケッて?
捲し立てて早く終わらせろ?って?
「はい」
きっと、心の声がそのまま音に乗ったんだと思う。
『 なんだ、ヤケに機嫌悪そうじゃね?』
「は?」
『 佐藤です』
「は?」
『 は、じゃねぇよ有馬、お前の先輩様だろが』
「先輩!?」
なぜ、この番号を知ってるのか分からなかったけど
いや、それより、どうして私に連絡をしてくるのかが、さっぱり意味不明。
『 おう、こないだはどーも』
「あ、はい、こちらこそ」
『 忙しいのは承知なんだけどさ、近々で空いた時間
オレにくれ』
「は?」
私の対応があまりにも疑問ばかりなことに
疑問を募らせた陣内の顔が、物凄く真面目クソ腐りまくっていて、ちょっとだけ怖かった。
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