カルテ8ー2

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助かった、と思ったのは ジーパンのケツポケットのスマホが音を立てたから。 「ちょ、陣内!電話、電話取らせて!」 「……誰、こんなタイミングで邪魔してくるの……」 心底悔しそうに呟いた陣内がその歩みを緩めた。 ちょっとだけ可笑しくなって クスリ、と出た笑い。 スマホを見つめて、その笑いがハテナに変わる。 知らない番号だ。 いや、元々、私のこの使えないスマホには決まった人からしか連絡が無い。 前は不動のチャンピオン、ボス。 だったのが今は陣内にすり替わっていた。 「だれ、これ」 首を傾げた私をじぃ、と見つめる陣内は 人差し指を目の前に掲げてクルクルと回した。 は? まけ? マケッて? 捲し立てて早く終わらせろ?って? 「はい」 きっと、心の声がそのまま音に乗ったんだと思う。 『 なんだ、ヤケに機嫌悪そうじゃね?』 「は?」 『 佐藤です』 「は?」 『 は、じゃねぇよ有馬、お前の先輩様だろが』 「先輩!?」 なぜ、この番号を知ってるのか分からなかったけど いや、それより、どうして私に連絡をしてくるのかが、さっぱり意味不明。 『 おう、こないだはどーも』 「あ、はい、こちらこそ」 『 忙しいのは承知なんだけどさ、近々で空いた時間 オレにくれ』 「は?」 私の対応があまりにも疑問ばかりなことに 疑問を募らせた陣内の顔が、物凄く真面目クソ腐りまくっていて、ちょっとだけ怖かった。
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