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「有馬さん、誤解するといけないから言っときますけど、入院中、何かと気にかけてくれって言われただけですから」
「知ってたの?心臓のこと……」
「昔のことは聞いてましたけど……今回のことは知りませんでした」
……疑わしい。
いや、疑ってはいけないのだろうか。
……でも疑わしい。
「それより、有馬さん、本当なんですか?」
「……なにがよ」
「加倉井さんの治療チームに参加するって」
「は?」
「先ほど、佐藤先生から聞かされました
有馬さんが特別チーム編成に入っていると。
……オペになったら、有馬さんじゃないとダメだって」
「知らないし。
断ったし、初耳だし」
しかも移植となったらドナーなんて簡単に見つからないじゃない。
だけど、白石と手を組んだら……
心臓なんてあっという間にみつかるし。
そりゃ、色々な適合率を調べなきゃだけど。
「あんた、ほんとに知らないの」
「何をですか」
私はここで初めて陣内を振り返った。
いつもの通りの真面目でちっとも面白味のない腐りきった顔で私を見下ろす。
くっそう。
陣内め。
この私をよくも惑わせやがって。
「とにかく、私、その件にはかかわらないから」
「そうですか」
冗談じゃない。
もういい加減にしやがれ、人生!
ロクでもないことをしてきた罪は違うことで払拭させてくれ。
これ以上、陣内と一緒にいると
気持ちが恐ろしいほどドロドロに滾りそうだ。
足早に医局に入り、オーダーを確認する。
それでも、まだまだ落ち着かない。
すっごいスピードで流れていく血液の音が耳の後ろで聞こえるようだった。
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