カルテ8ー2

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ただそこに座っているだけなのに ただそれだけで画になる、存在。 お綺麗なお嬢さんですこと。 ……っと、なんて嫌味腐った自分に驚愕だ。 あ、れ。 綺麗なお嬢さんこと加倉井さんは、ふ、と 前を向き直るとそのまま静かに座っていた。 ……陣内に会いに来た訳じゃ、ない? 陣内は素知らぬ顔をして 救命センターへと足を向ける。 「ほら、有馬さん、置いていきますよ?」 振り返ったその顔には 凄まじい笑顔が炸裂していて なんなら、その股の間も炸裂していそうなくらいの 満面の笑み。 おいで おいで と、見えない手招きに吸い寄せられながら 陣内の後へ続いた。 「ね、陣内……」 「なんですか?」 言いにくいことではあったけど どうも、しっくりこなくて…… 「あの、加倉井さん ……どうしたんだろうね?」 私はてっきりアンタを待ち伏せてんのかと 思ってたよ? それに対する陣内の返事はなくて 「……気ニナルの?有馬さん?」 掌をきゅ、と掴んだ陣内は 私に顔を近づけながら、また、ニコリと笑った。 「い、いやそういう訳じゃな」 「決まり」 「え?」 「ちょっと付き合って?有馬さん」 「は??!」 「例のとこ」 え、いや、まっ 「あーれーぇー」 こうして、免れたと思っていた営みに直面するのであった。
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