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その日、陣内とそのままローテが合わず
先にタイミングが合ったのは、ボス。
「望絵」
「お疲れ様です」
「どうした」
「どうしたもこうしたも、ないんですが
……まぁ、ボスはきっと知ってても何も教えてくれないから、いい」
パタン、と閉めたドア。
シートベルトを引っ張ると、車は静かにエンジンを鳴らした。
「そんなことないぞ」
「なくないし」
軽く笑うボスにはもう騙されない。
「なんだ、言うだけ言ってみろ」
「いい、聞くだけ無駄だから」
それより肉を喰いたい、とボソリ呟く。
「飢えてるな……」
ボスと2人なのがなんとなく恥ずかしいのは
陣内とのことを知られているからだろうか。
ボスには何もかも知られてるのに、さらに
陣内とのことを知られているからか。
ややこし。
「ボス……」
「なんだ」
聞きたいことがあった。
「陣内はどんなヤツでしたか」
私と同じ路を辿ってきた“陣内”という男は
どんなヤツだったんだろう、って
前から思っていた。
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