カルテ8ー3

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「そんなの、知ってる訳ないじゃないですか……」 「お前がいた2000年からの6年間、 公にされている記録では臓器移植の実績なんか年間200件にも満たない。 だけど、お前が……お前と陣内先生が扱ってきたのは 年間、最低でも100、6年で1000件」 ……そりゃ、そうだろうよ。 来る日も来る日も脳死判定をして そこから使えるだけの臓器を取り出した日々を思い出す。 先生の捌きはほんとに凄くて、しかも速くて 着いていくのに必死だった。 「陣内先生がお前を絶賛してた」 「……嬉しくない」 「自分より質のいい腕を持ってるってな」 だから、なんで 今、この話なんだっつの。 「ボス、で、陣内は?」 「アイツはほんとにハングリーだったよ。 まあ、もともと頭もいいし理解も速い。 しかもお前と違って、早くから環境に適応してたからな。 陣内が扱った移植は同じ6年で1000は軽く超えてる。 アイツがいた頃からまあ、水面下で抗争も激しくなって、外傷なんかはお前がいた頃よりも多かったな」 なんと。 ヤツはやっぱエリートかい。 「“有馬さんはどんな人だったんですか” 同じことを聞かれたことがあったな」 ほら、着いたぞ。 そう言って車を止めたのは駅ビルの駐車場入り口。 私の人生は、こうやって決まっていくんだ。 誰ともなしに手を引かれて 逸れた、と思っていた路は 実は最初から私のために轢かれていた路で 何一つ逸れてなんかいなかったんだと この後、気付くことになる。
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