918人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんなの、知ってる訳ないじゃないですか……」
「お前がいた2000年からの6年間、
公にされている記録では臓器移植の実績なんか年間200件にも満たない。
だけど、お前が……お前と陣内先生が扱ってきたのは
年間、最低でも100、6年で1000件」
……そりゃ、そうだろうよ。
来る日も来る日も脳死判定をして
そこから使えるだけの臓器を取り出した日々を思い出す。
先生の捌きはほんとに凄くて、しかも速くて
着いていくのに必死だった。
「陣内先生がお前を絶賛してた」
「……嬉しくない」
「自分より質のいい腕を持ってるってな」
だから、なんで
今、この話なんだっつの。
「ボス、で、陣内は?」
「アイツはほんとにハングリーだったよ。
まあ、もともと頭もいいし理解も速い。
しかもお前と違って、早くから環境に適応してたからな。
陣内が扱った移植は同じ6年で1000は軽く超えてる。
アイツがいた頃からまあ、水面下で抗争も激しくなって、外傷なんかはお前がいた頃よりも多かったな」
なんと。
ヤツはやっぱエリートかい。
「“有馬さんはどんな人だったんですか”
同じことを聞かれたことがあったな」
ほら、着いたぞ。
そう言って車を止めたのは駅ビルの駐車場入り口。
私の人生は、こうやって決まっていくんだ。
誰ともなしに手を引かれて
逸れた、と思っていた路は
実は最初から私のために轢かれていた路で
何一つ逸れてなんかいなかったんだと
この後、気付くことになる。
最初のコメントを投稿しよう!