カルテ8ー3

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「だーれが待つか。 こっちだって仕事あるんだっつーの」 ……にく。 ほんとに肉喰わなきゃ。 ヤられてしまう。 何が譲れだ、バカヤロー。 どの口がんなこと言ってんだっつーの。 命の火を勘違いに燃やすなっての。 ここです!言いたいのは! だけど 身体が弱る、っていうのはそういうことなのかもしれない。 何にでも縋りたいという想いは 自分が、頼りたいと思う人なら尚更なのかも。 あの白石だって病床の淵であんな風になったぐらいだ。 加倉井さんだってなりたくてああなった訳じゃないし。 「げっ!」 ここは病院の公のフロア。 なのに、何故こんなとこに。 「あからさまに嫌そう顔するなぁ?闇医者」 出た! 顔だけ勿体ないクソザル! 「なんであんたがここにいんのよ!」 「ブレイドの見舞いついでにな? 加倉井の爺さんとこの……あぁ、知ってんだろ?」 「……今取り込み中よ、行かない方がいい」 「……おい、お前」 「なによ」 「いや、いい」 「は?」 クソザルが立っていると 周りを過ぎ行く女子が必ずその顔を1度は見ていく。 「あんた、ホント……」 「なんだ」 マジマジと顔を見上げて呟いた。 「……勿体ないわ」 「……何が言いたい」 「別に」 クソザルだって、今じゃめでたく白石の代表になってはいるが、白石の実子ではなかったわけだ。 「じゃあね」 エレベーター横の階段を下りる。 長居は無用だとばかりに急ぎ足になる自分にちょっと笑える。 何やってんだ、有馬望絵。 アンタがグダグダしてるからこんなことになるんだろうが。 あ、黒望絵ちゃん。 ほんとに仰る通りですよねー? だけどね私だって好きでグダグダな訳じゃないんですよ。 「あ」 ふと思い出してクルリと向きを変え、下りてきた道を駆け上がる。 クソザルに聞きたいことがあった。 ちょうどいい。
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