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クソ代表ザルと陣内のそれは
二人の間のちょうど真ん中あたりでぶつかり合う。
「陣内っ!」
陣内のなにも掴んでいない方の掌を握って引いていた。
「陣内」
「なんですか、有馬さん」
クソ代表ザルはクソミソ、クソだけど
さっきはそれだけじゃなかったの。
相変わらずひっくい声を放つ陣内の手をグイグイ、と引いて呼び寄せるもビクともしない。
「気分、悪い。
ね、陣内」
きっと、クソ代表ザルを庇うような発言をすると
怒りに怒りのかさが増すような気がする。
だから
言えない。
少しだけ俯いて、ゴクリと空唾を呑み込んだ。
「…大丈夫ですか」
低音が解除された音を聞いて少しだけホッとする。
「大丈夫じゃない」
「……行きましょうか」
陣内の身体に蔓延っていた勢いがなくなったのを感じた。
クソ代表ザルを掴んでいた掌が今度は私に添えられる。
急に静かになったトイレにドアの開閉音が響いた。
扉が閉まる前にチラリとクソ代表ザルに視線を飛ばす。
何がなんなのか、さっぱり分からない。
満足そうに笑った綺麗な顔に、嫌味な感じはどこにも見当たらなくて……
ちょっとだけ、困る。
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