カルテ9ー2

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沢山の棚に置かれた生食パックの中身が クリームソーダの色をしていた。 「陣内、はなして……」 「ねぇ、有馬さん、どうやって喰われた?」 グラグラと揺れる棚から ゴロンゴロンと何かが床に落ちた。 「どうやってもくわれてなんか、な」 「この期に及んでまだそういうこと言う?」 陣内の力の強さはよく分かってる。 それに雄(オトコ)と雌(オンナ)じゃ元々筋肉の太さだって そこに、伝わる刺激だって違う。 だから 敵わないのは当たり前なんだ。 「ムカつくね、やすやすと食べさせるなんて」 たすけて 「だいたいさ、有馬さんほんと甘いよ」 お願いだから 「もっと厳しくしなきゃダメな子?」 「じ、んなぃ」 たまに この雄が“陣内”に見えない時がある。 普段は真面目腐敗ったクソ真剣モードで どこか優等生のそれは 言うことだって することだって 何も飾らず直球なのに 「抵抗ぐらいしたんだろうな」 何処かに隠された部分とすり替わった瞬間に こうやって 恐ろしいチカラを振りかざして 「どこまで入らせたの?」 私をユさぶり、フルエさせる。 親指が唇を撫でていく。 薄い緑の輪郭線を辿り 逆光の所為で暗闇の中に探すのは陣内の瞳。 悶えて苦しむようにほえたのは、腹の底。 すっかり飼い慣らされ、反抗のしようもない。
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