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唇から顎に移る人差し指が次に何処へ赴くのかが
死ぬほど気になる。
喉の皮膚を爪先が引っ掻くと
ぞくん、と膚が膨れ上がった。
鎖骨と鎖骨の真ん中でたゆたいながら正中線を滑り下りて行くんだろうと想像しながら
また、息を呑む。
だけど思惑通りには進まない。
指が離れて、陣内と私を繋ぐものは暗闇の中での不確かな視線のみ。
「……嘘」
「え……?」
「嘘吐きはオレ……
ムカつくなんて、嘘」
「陣内?」
ふ。と近付いてきた陣内が
一度、ペタっと唇をくっ付けた。
まるで、小さな子供同士がするような、遊び。
「有馬さんが、オレ以外に触れられてんのがイヤ」
また、ペタっと付けて今度は食みながら離れていく。
「そんで、困った顔、すんのがイヤ」
後ろの棚を掴んだ陣内の右手と左手。
その中に完全に囲われてしまって、しかも……
こんな甘い声で囁かれたら
……イキそうになる。
心臓が高鳴りをこれでもかと伝えて
全部が浮き足立って
表面がべろん、と裏返るんじゃないかと思うくらい。
狭まるような感じに胸が潰されそうになった。
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