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急変、というのは誰しもに付き纏う状態で
彼女にしても、なんら驚くようなことではない。
「血圧、下がってます!70切りました」
「ドーパミン!!」
同日の深夜に心臓の色々な機能が落ち着かなくなってきた加倉井さんは翌早朝、その様態を一気に下降させた。
「EF(※左室収縮力)は??」
「30台です!」
救命でのオペを1本終えた後で
心外からのコールを受けた私は、自分でも驚くぐらいの速さでここに駆けつけていた。
聴診する耳の奥で
自分の心拍が煩いぐらいに喚く。
「IABP!」
「お願いします!」
ザワザワする。
身体の中も、頭の中も
自分にアドレナリンが沢山流れているのがハッキリ分かった。
なんとか
なんとかしないと。
そういえば……聞いたことがあった。
ボスのお父さんが肺癌で、自分が執刀医だったボスは
実際にその病変を見て、愕然とした、って。
もう何もすることがなくて、力の無さを目の当たりにした、って。
心臓、不思議な不随意筋の塊。
その動きが発するパルスには意味があって
どこを、どうして
どこが、どうなってるか
そして、どこに異常があるのか
全部分かるようになっている。
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