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「WBC(白血球)も、CPKも高いな……」
CPKの値が高いということは
筋肉細胞が多く壊れている証拠だった。
血液培養でのウイルス抗体で薬物療法を始めたものの……
あまり改善は見られないかもしれない。
人の身体は本当に不思議だ。
どうしてこんなことになるんだろう。
もし、私以外の腹の中で育っていれば……と、考えてしまうのは
やっぱり少なからず、責任を感じるからだ。
彼女はこの事実を知らないだろうから
ごめん、と謝ることもできないけど。
「飲みますか?」
「え?」
いつの間にか横に座っていた陣内がパソコンの画面を覗きながら、私に眼鏡を通したセーブさせた力を魅せつける。
「何を?」
な、なにを飲ませようって言うんだ……陣内よ。
ゴクリ、と飲み込んだ喉元に視線を移し、その厭らしい唇をクイ、と引き上げる。
「せーえき」
「は?」
「だから、せー」
「はぁぁ?!」
「お願いだから、いっぺんぐらい飲んでください」
「バカモノ!バカ!ケダモノ!!!」
陣内のエロい指が指差したのは
勿論、ザ・モンスター。
「は?な、なんで勃っ……」
慌てて口を噤んだ。
「悩んでる有馬さん見たら、ものっすごくムラムラしました、すみません」
は?
ニコニコ笑う陣内とヒクヒク笑えない私。
「ま、いくら何でも今は無理だから、はい」
目の前に突き出されたグレープフルーツジュース。
「これ、身体に染み込ませといてください」
ニコニコをツヤツヤに変えて
それ私に押し付けた。
キュン、と音をたてたのはあらゆる入り口だった。
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