カルテ9ー2

2/36
964人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
「WBC(白血球)も、CPKも高いな……」 CPKの値が高いということは 筋肉細胞が多く壊れている証拠だった。 血液培養でのウイルス抗体で薬物療法を始めたものの…… あまり改善は見られないかもしれない。 人の身体は本当に不思議だ。 どうしてこんなことになるんだろう。 もし、私以外の腹の中で育っていれば……と、考えてしまうのは やっぱり少なからず、責任を感じるからだ。 彼女はこの事実を知らないだろうから ごめん、と謝ることもできないけど。 「飲みますか?」 「え?」 いつの間にか横に座っていた陣内がパソコンの画面を覗きながら、私に眼鏡を通したセーブさせた力を魅せつける。 「何を?」 な、なにを飲ませようって言うんだ……陣内よ。 ゴクリ、と飲み込んだ喉元に視線を移し、その厭らしい唇をクイ、と引き上げる。 「せーえき」 「は?」 「だから、せー」 「はぁぁ?!」 「お願いだから、いっぺんぐらい飲んでください」 「バカモノ!バカ!ケダモノ!!!」 陣内のエロい指が指差したのは 勿論、ザ・モンスター。 「は?な、なんで勃っ……」 慌てて口を噤んだ。 「悩んでる有馬さん見たら、ものっすごくムラムラしました、すみません」 は? ニコニコ笑う陣内とヒクヒク笑えない私。 「ま、いくら何でも今は無理だから、はい」 目の前に突き出されたグレープフルーツジュース。 「これ、身体に染み込ませといてください」 ニコニコをツヤツヤに変えて それ私に押し付けた。 キュン、と音をたてたのはあらゆる入り口だった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!