カルテ9ー2

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「あー、いいねぇ、ますますイイ よく我慢できたよな、親父」 掴まれたままの手首が徐々に締められる。 なんて握力してんだ。 振っても、何しても解けないのは一目瞭然で 「離してよ」 「さあ、どうするかな」 全体的に冷やかな笑いなのにもかかわらず眉目秀麗なクソ代表ザル。 「オレは人が苦しむ姿を見るのが好きだからな」 「……あんた、ほんともったいないわ。 その顔、あんたにもったいない」 首を傾げて楽しそう声をあげて笑ったクソ代表ザルが、掴んだ手首を自分の方へ引き寄せる。 勿論、力はそのまま身体へと伝わり斜めに傾いた私はクソ代表ザルに捉えられた。 ギュッと、ほぼ羽交い締めにされ身動きが取れないまま、耳に唇が押し付けられる。 「離……」 「違法でもなんでも、使えるものは使え」 「はな……」 何を……言ってんだ、こいつ…… 「正規に則(ノット)ったカタチで調達してやるから」 「な……」 ちょっとした衝撃を受けた。 クソ代表ザルの癖に、こんな訳の分からないことを言われたら コンパスが狂う……。 「なんで……」 そんなことを言うんだ、と言いかけた時 ドアの向こうで凄い音がして そこが開けられた。 「これはこれは、おにいさん。 今からイイトコだったのに」 そのセリフに 振り向けない私は ただ、息を呑む。
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