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「可愛くないとこも可愛いですよ、有馬さん」
離れた筈の手は
また浚うように奪われて
それと一緒に、心臓も人質に取られる。
陣内の言動にいちいち周章狼狽を繰り返すそれは陣内に根刮ぎ持ってかれた。
生かすも殺すも、意のままだ。
「汗ばむ有馬さんも素敵です」
んなこと言われたら、余計に汗かくっつーの、
「あんた、変態でしょ」
「ええ、いけませんか?
だいたい男なんてこんなもんですよ。
好きな人を前にして変態にならないヤツを見てみたい」
は。
は?
いとも簡単に、変態を肯定し、変態発言してしまう陣内は
「安心してください、有馬さんにだけ、変態ですから」
握った手を繋ぎ直した。
指と指の間に陣内の指があって
なんだか余計に湿ってくるそこに滞りなく恥ずかしくなる。
「有馬さん、結婚しませんか」
「ふ、……は?」
「やっぱり、あなたを放っておく事は
世間様に非常にご迷惑がかかります。
ですからここはひとつ、陣内に落ち着いて下さい」
一段と空気が冷えた。
真夏の夜。
熱帯夜とよばれる寝苦しいくらいの気温が保たれている周囲とは明らかに、2度ないし3度は低い。
両側が深い木々に覆われ
少しだけ周りよりも暗いそこで
「有馬さん、返事は待てません」
陣内は心得てる。
私がキュン、と心を揺すられる音を。
私がギュッ、と子宮を掴まれる仕種を。
私が、陣内を好きだと思う瞬間を。
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