カルテ10

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「案外早かったな」 「何が……」 「もっと悩むかと思ってたのに つまんねぇ女だな」 「……アンタに言われたくない」 昔、白石はここで大勢の幹部とよく昼間っから飲んでいた。 ウルサイのなんの。 こいつはそんなことしないのかなぁ。 「今、冷たいお茶をお持ちしますから」 「ブレイド、“茶”なんていらない。 客じゃないんだ」 まぁ確かに客じゃないけどさ このくっそみそ暑い中、来たんだから 水ぐらい出しやがれ、バカ者。 ま、いいけど。 これみよがしにマイウォーターをテーブルの上に出した私。 「分かりました、では、失礼します」 ブレイドさんがいつもと変わらない デラ丁寧すぎるお辞儀を披露した。 「で、どうした闇医」 「心臓。 若くてピチピチした心臓、コーディネートして欲しいんだけど」 前振りなんていらないし。 遠慮もいらない。 バッグから取り出した 病院の名前入の薄緑の封筒。 「レシピエントの基本資料」 そして、マイウォーターに手をかけた。 別に喉は渇いてなかったけど なんとなくの手持ち無沙汰を感じて、それに手を伸ばす。 深く背凭れに身体を沈めたクソ代表ザルは 封筒に目を一度、そして私を一度 また、封筒に一度、視線を動かしてから いつものようにバカ声で、笑った。 ほんと、こーゆーとこ、白石にそっくりなんだけど。 伯父さんなんでしょ? 陣内は……白石にあんまり似てない、……気が、する。
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