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「ドナーの最終評価出ました」
うちの病院で
心臓移植をするのは、これが初めてだ。
期待も掛かっているんだろうか
チラリ、と上を見てみると
わんさか、いる。
見物できるほど、暇なのかい、あんたたち。
じゃあ、救命手伝ってよ。
「有馬、いいか」
「あー、はいはい、大丈夫ですよ」
佐藤先輩とオペに入るのは2度目だ。
既にホワホワしている加倉井さんに声をかけた先輩は麻酔医に合図する。
絶好調のサインを見せたのは、三原。
心強い限り。
マスクの下で笑い合い、三原のコントロールが始まった。
麻酔導入。
今から彼女の弱りきった心臓を取り出すためだ。
そして、白石醫院では
陣内とボスが
名ばかりの最終評価を下して
この子に最適なドナー心を確保しようとしてくれている。
天を見上げて目を閉じた。
心臓を先に横取りしたことの謝罪。
ドナーの冥福を祈り
そして
今日、ここで何事もなく、全てを終えられるように。
無影灯が瞼を明るく照らす。
透けた血液がそこを赤く見せた。
目を閉じているのに、色を感じるなんて不思議だ。
「皆さん、宜しくお願いします」
三原のGOサインが出た。
「レシピエント心摘出、始めます」
開かれた身体は、以前のオペ痕はあるものの、ホクロや染みもなく綺麗なもので……
あたりまえだけど
また、ここに大きな傷跡が残る。
でもね
そんな跡さえ気にならないくらいに
楽しい人生が送れるようになるから。
だから
全部、任せて。
開胸したら出来るだけ速くに事を進める。
きっと今頃、ドナー心はびっくりするようなスピードで適切な処置を施されて
またまたびっくりするようなスピード取り出されているだろうから。
だって、あの2人なんだから。
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